文献レビューのアウトラインは、読んだ論文の目次ではありません。主張をどの順に並べるかの決定です。その順序が決まって初めて、論文は主題ではなく、主張の中に置かれる根拠になります。
違いは最初の草稿に出ます。論文から作ったアウトラインは「Smith (2019)」「統計的手法」「近年の研究」のような見出しになり、草稿は一覧として読めます。主張から作ったアウトラインは、見出しがそれぞれ何かを主張し、論文は必要な場所に現れます。
この記事はアウトラインそのものの話です。本文をどう分けるか、各節に何を入れるか、そのまま写せる雛形、そして壊れたアウトラインと機能するものの見分け方。論文の収集とメモは済んでいる前提です。メモが無いまま構成を決めると、先に形が決まり、あとはその形を裏付ける根拠を探しに行くだけになります。
レビューが主張する 1 文から始める
見出しより先に、このレビュー全体が支えようとしている 1 文を書きます。出発点の問いではありません。いま自分が擁護できる答えのほうです。
タンパク質構造モデルは学習データの締め切りより前に公開された構造で検証されることが多く、報告されている精度は上限値である。
これはアウトラインを組み立てられる文です。本文が何を確立すべきかが、すでにこの 1 文に書いてあります。検証は通常どう行われているか、締め切りがなぜ効くのか、そこを揃えると数字はどうなるか、の 3 つです。
この 1 文がまだ書けないなら、アウトラインは助けになりません。作った節はトピックの箱になり、それが足し合わさらないことに執筆の段階で気付きます。
本文の分け方は 1 つに決める
ライティングガイドがよく挙げる型は 4 つです。1 つ選び、本文の最上位ではそれだけを使います。同じ階層で混ぜるのは、よくある構造上の失敗です。
| 型 | 節にあたるもの | 使いどころ | 失敗するとき |
|---|---|---|---|
| 主題別 | 概念・下位の問い | 既定の選択。分野が「何が重要か」で割れているとき | 「主題」の中身が論文 1 本ずつになる |
| 時系列 | 時期・世代 | 時間による変化そのものが主張であるとき | 決定的な変化が無く、主張ではなく年表になる |
| 方法論別 | 手法・研究デザイン | 分野の意見の割れ方が、使った手法と対応しているとき | 手法は違うが結果は一致していて、分け方が何も説明しない |
| 理論別 | 学派・枠組み | 前提が両立しない陣営に分野が割れているとき | 陣営が著者の側ではなく自分の発明になっている |
入れ子にするのは問題なく、むしろ正しいことも多いです。最上位は主題別にして、「2022 年に解決した」が本当に筋書きである主題の中だけ時系列にする。うまくいかないのは交互に使うことです。主題別の節を 2 つ置いてから時系列の節を挟むと、読者は次の見出しが何の話か予測できなくなります。
型を選び間違えていないかの検査はこれです。選んだ型は、分野の中の対立を見えるようにするはずだ。互いに矛盾する 2 本の論文が、構造のせいで別々の節に分かれて出会わないなら、どれだけ整って見えてもその構造は間違いです。
各パートに何を入れるか
- 序論。範囲(何を入れ、何を外し、なぜか)、問い、そして本文の節を順に挙げる導線の 1 文。査読者が残りを読む価値を判断するのに使うことが多い部分です。
- 背景・用語の定義。分野がその語を争いのある使い方をしている場合だけ置きます。そうでなければ削る。水増しされやすい節です。
- 本文の各節。見出しが主張を 1 つ持ちます。その下に、合意されていること、争われていること(と、どちら側に誰がいるか)、双方の根拠の質、そして自分の問いにとって何が未解決のまま残るかを 1 文。
- 統合。その「未解決」の文を集めて突き合わせる場所です。ギャップに名前がつくのはここで、新しい思いつきではなく前の節の足し算のように読めるべきです。
- 結論。根拠が実際に支える強さで問いに答えます。正直な答えが「研究の異質性が高すぎて比較できない」なら、それが答えです。
ギャップについて 1 つ注意を。多くの雛形は「文献のギャップ」を末尾の独立した節にします。これはうまくいきません。助走なしに現れたギャップは、ただの断定に見えるからです。本文の各節が何かを開いたまま終わるようにすれば、統合には集める材料ができます。
そのまま写せる雛形
主題別・3 主題の形です。角括弧の中を差し替えてください。
表題: [主張の 1 文を短くしたもの]
1. 序論
1.1 なぜ今この問いか — [何が変わって問えるようになったか]
1.2 範囲 — [X, Y] を含み、[Z] は [理由] により除外
1.3 問い — [1 文]
1.4 導線 — 「2 章で…を確立し、3 章で…、4 章で…」
2. 主題 A — [主張。例:「検証セットが学習データと重なっている」]
2.1 合意されていること — [通説と、それに使われる定番の 2〜4 本]
2.2 争われていること — [対立点と、どちら側に誰がいるか]
2.3 根拠の質 — [研究デザイン、標本数、何があれば決着するか]
2.4 未解決 — [1 文]
3. 主題 B — [主張]
3.1〜3.4 同じ 4 つのスロット
4. 主題 C — [主張]
4.1〜4.4 同じ 4 つのスロット
5. 統合
5.1 主題どうしが一致するところ
5.2 衝突するところと、その理由 — [手法? 対象集団? 定義?]
5.3 ギャップ — [上の「未解決」の文を組み立てたもの]
6. 結論 — [根拠が支える強さでの答え]
繰り返される 4 つのスロット——合意・争点・根拠の質・未解決——が、これを一覧ではなくアウトラインにしています。節の長さが予測できるようにもなるので、字数制限があるときに効きます。
時系列にするなら 2〜4 章を時期に置き換え、スロットを「この時期に新しくできるようになったこと」「それでもできなかったこと」に変えます。方法論別なら手法の系統に置き換え、「この手法で検出できること・できないこと」のスロットを足します。序論・統合・結論は変わりません。
書き始める前の 3 つの検査
アウトラインに対して実行します。どれも 1 分で終わり、後で何日分にもなる失敗を捕まえます。
- 見出しだけの検査。見出しだけを順に読みます。主張になっていますか、それともトピックの列挙ですか。見出しだけで何を主張しているか他人に伝わらないなら、それはトピックです。
- 論文 1 本の検査。1 本の論文だけで支えられている節は、主題ではなく論文です。隣の節に併合するか、対になる研究を探しに行きます。
- 削除の検査。節を 1 つ消します。結論はまだ成り立ちますか。成り立つなら、その節は飾りです。削るか、荷重を持たせるかのどちらかにします。
余裕があれば 4 つ目。各節について「この節のおかげで、前の節では言えなかった何が言えるようになったか」に答えます。答えられないなら、その 2 つは同じ節です。
アウトラインから草稿へ
アウトラインができれば、残りは機械的な作業です。各論文を、それを使う節の下に置く。どこにも入らない論文は、たいてい自分が書いていない別のレビューのものです。逆に 3 か所に入る論文は、たいてい主題の切り方が間違っています。
Litlasではこの部分をこう進めます。論文はそのレビュー用のボードに入り、1 本ずつ自分のメモを持ちます。ライブラリの検索は表題だけでなくメモの文面も対象なので、メモに節を書いておくと(「3.2 争点・小標本での破綻」のように)、アウトラインの各節が検索 1 回の一覧になります。レビュー本体は内蔵のエディタ(Markdown・LaTeX・リッチテキスト)で書けます。LaTeXとリッチテキストのエディタでは引用を自分のライブラリから挿入でき、参考文献リストはAPA・Chicago(著者-年)・IEEE・MLA・Vancouverで生成されます(Markdownのエディタには引用の挿入UIがありません)。無料プランはボード 3 個・保存 100 件と、1 日あたり検索 5 回・✨ 3 回・グラフ表示 5 回で、レビュー 1 本には足ります。
正直な限界を 2 つ。Litlasはアウトラインを作ってくれません。自前の言語モデルを持っていないからです。✨ボタンはPDFや草稿をGemini・ChatGPT・Claude・Gemini Notebookへ橋渡しするもので、返ってくるのは各サービスの出力です。Litlas経由で届くだけで、生成したのはLitlasではありません。そしてシステマティックレビュー向けの仕掛けもありません。スクリーニングの手順も、PRISMAのフロー図も、選択・除外の記録も持っていません。その意味で再現可能でなければならないレビューなら、その部分は専用のツールが要ります。
避ける価値のある失敗
失敗するアウトラインは、薄すぎたものであることはめったにありません。見出しが読んだものの名前になっているほうです。「深層学習の手法」「統計的手法」「その他」。構造のように見えます。しかし何も約束していないので、アウトラインの中に間違いが存在しえません。そして執筆の段階で、節が結論に足し合わさらないことに気付きます。
主張をする見出しは間違いうる。それがまさに役に立つ理由です。そしてアウトラインの段階で間違っているほうが、2 週間ではなく半日で済みます。
