論文を 1 ページ目から順に、1 回で読み切ろうとするのをやめると読む速度は上がります。これは飛ばし読みの勧めではありません。目的の違う 3 回に分ける、という話です。
1 回目:捨てるために読む
読むのは題名・要旨・見出し・図表のキャプション・結論だけです。所要時間は 5 分です。ここで答えるのは 1 つだけで、自分の問いに関係するかを判断します。
関係しないと分かったら、そこで閉じます。1 回目の目的は理解ではなく、残りの時間を使う価値があるかを決めることです。読んだ本数ではなく、捨てられた本数がこのパスの成果です。
2 回目:主張をつかむために読む
本文を読みますが、証明・実験の細部・付録は飛ばします。所要時間は 1 時間です。終わったときに、次の 3 つを他人へ説明できる状態を目指します。
- 何を主張しているか
- 何と比べて良いと言っているか
- どういう条件のときに成り立つと言っているか
図表は本文より先に見ます。実験の設計は、たいてい本文よりも図の軸に書いてあります。
3 回目:再現できるかを確かめるために読む
自分の研究がその論文に依存するときだけ行います。所要時間は数時間です。仮定を 1 つずつ書き出し、自分ならどう実装するかを追いながら読みます。
このパスの目的は、著者が書いていないことを見つけることです。初期値・前処理・打ち切り条件のような、書いていないと再現できない箇所がどこにあるかが分かれば、その論文を土台にしてよいかが判断できます。
どのパスまで進むかを先に決める
3 パス法が有効なのは、パスを分けること自体ではなく、次のパスへ進むかどうかを毎回決めるからです。全部の論文を 3 回読む必要はありません。多くは 1 回目で終わりますし、それが正しい結果です。
自動化を使うのは、この判断のあとです。限定した資料群へ質問するなら論文をNotebookLMで扱う方法、比較を速めるならAIによる論文要約が役立ちます。どちらにも、2 回目へ進む論文を決めさせないでください。
進むかどうかを決められない理由が、内容ではなく言語のこともあります。英語の論文で語彙や構文に時間を取られて 2 回目が終わらないのであれば、1 本目を最後まで読み通す手順を英語論文の読み方にご紹介しています。
参考文献
- Keshav, S. How to Read a Paper. ACM SIGCOMM Computer Communication Review. 2007, 37(3), p. 83-84. https://doi.org/10.1145/1273445.1273458
